転校した元いじめっ子男子と再会し、恋に落ち片思いを続けて最後は…
【1.いじめっこの男の子】
私が小学校1年生の頃、クラスで一番やんちゃで意地悪な男の子がいました。
体も大きく乱暴者のその男の子は、クラスで一番体が小さい私に目をつけて毎日意地悪をしてきました。
しかし、私は彼が
『意地悪をしている』
と思ってはいるものの、何故か
『怖い』
とは思わなかったのです。
嫌な事を言ってきたり、意地悪な事をした彼ですが、私に怪我をさせた事はなかったからです。
クラス中が彼を怖がり近寄らない中、彼を怖いと感じていなかった私は意地悪をされても彼に話しかけるのをやめませんでした。
【2.彼が意地悪をやめた日】
ある日、いつものように彼の所に行く私に、彼はいつものように意地悪をしてきました。
しかしその日はいつもと違っていました。
彼は私の耳を引っ張って遊び、誤って引っ?いてしまったのです。
私の耳からは血が流れ、それを見ていた周りの子が言いつけたのか、先生が走って来ました。
周りが大騒ぎの中、痛みよりも驚きの方が大きかった私はポカンと彼を見つめ、彼もまた、怪我をさせる気なんて毛頭なかった様に目を見開いて立ち尽くしていました。
自宅に帰宅した夜、彼は彼の母親と一緒に私の家に謝りにやって来ました。
その時の彼は、いつもの乱暴でやんちゃな姿とはまるで別人のように下を向いて、何かにショックを受けているように一度謝ってから何も話しませんでした。
そして彼は、それ以来私に悪戯をする事をやめました。
怪我をしても悪気がなかった事がわかっていた私は、相変わらず彼に恐怖心も怒りもありませんでした。
【3.転校】
私が住んでいた場所はとても田舎で、子供の人数も少なく、小学校も中学校も学年は1つしかクラスがありませんでした。
そして保育園から中学校までは距離も近く、保育園で同じ組になった子達とはそのまま同じクラスで中学校3年生まで一緒でした。
彼も中学3年生までは一緒に進学して行く筈でした。
しかし、小学3年生になったある日、彼は隣町の小学校に転校してしまいました。
転校の理由は親の離婚でした。
転校の旨を話す先生の隣にいた彼は、落ち着いていて少し寂しそうに見えました。
私は行ってしまう彼に何も言う事が出来ずに、ただ茫然と見つめる事しか出来ませんでした。
【4.彼との6年越しの再会】
私の住んでいた田舎は中学校までは1つの地域に纏まっていましたが、高校はもっと数が少なく、町をいくつか越えなければありませんでした。
その為、私の住んでいる地域や近隣の地域の人たちが行く公立の高校は大体3つ程に絞られていました。
私もその中の1つの高校に進学する事に決め、無事合格。
入学も済ませ、私の学年は3つのクラスに分かれました。
初日からクラス毎に何人か友達を作った私は、休み時間に全てのクラスを訪問しました。
すると、隣のクラスに彼はいました。
【5.お久しぶりです】
私はすぐに同じ高校に彼がいる事に気付きました。
彼は昔のやんちゃで意地悪だった頃とは別人のように、とても落ち着いていてクラスの隅で馴染めないように一人で座っていました。
背が高く大人びた表情の彼は、決して明るい訳でも親しみやすい訳でもありませんでした。
「小学生の頃に友達だった子の事なんて忘れているかも...」
と思っていた私はなかなか彼に話しかける事が出来ませんでした。
高校2年生になり、選択授業が始まった春にチャンスが来ました。
私は絵を描くのが好きだったので美術を選択し、教室に向かうと、教室には相変わらず隅に座る彼がいました。
美術を選択していた生徒は少なく、授業が始まる少し前だった為、人の少ない教室を見た私は
「チャンスだ!」
と思い、彼の座る席の前まで走っていきました。
「こんにちは、お久しぶりです。私の事覚えているかな?」
そう彼に問いかけると、彼は気まずそうに、そして照れくさそうに
「覚えているよ」
と笑ってくれました。
「私の事をいじめていた事も?」
そのように聞くと、彼は机に頭をつけて
「あの時は本当にごめんなさい」
黒歴史です、なんて彼は手を合わせて謝りました。
【6.恋】
再会し、再び友人になってから、私が彼の事を好きになるのに時間は掛かりませんでした。
高校生になった彼は、大きな体に似合わず気が弱く、とても心優しい人に成長していました。
背も高くルックスも悪くなかった彼は、教室の隅にいてもクラスメイトや後輩から人気があり、定期的に告白をされたり、メールアドレスを渡されていました。
人見知りで大人しい彼にとって、女の子の友人と呼べる人は私しかいなく、周りからは「付き合っている」と噂される程で、まるで漫画のワンシーンのように、彼の事が好きな後輩の女の子から呼び出された事もありました。
小学校で別れ、高校で再会し、再び友達になって好きになる、それをとても運命的に思い、そして彼の傍にいられる唯一の女の子である事を
『特別』
に感じ、私は日に日に彼を好きになっていきました。
【7.卒業】
高校3年生の夏、私は彼に告白しようと決意しました。
卒業してしまえばもう会えない、会えなくなってしまう前に、この気持ちを彼に伝えたい。
私は彼に
「大事な話がある」
とメール送りました。
彼は幾度も同じように告白された事があった為か、何かを察しているようでした。
気が弱かった彼は
「このままメールで話がしたい」
と言ってきました。
その時点で、答えはわかっていたのかもしれません。
「私はずっとあなたの事が好きでした」
震える手で送信ボタンを押しました。
それから何十分経ったか、もしかしたら1時間程経っていたかもしれません。
メールの着信音が鳴りました。
目をゆっくり開けてメールを見ると、そこには
「ごめんなさい」
という一文が見えました。
「女の子の友達というのがとても貴重で、恋愛という対象としては見られていなかった」
彼は出来るだけ私が傷つかないように、優しい文で告白を断ろうとしていました。
私はそれ以上彼を困らせたくなくて
「ありがとう、これからも友達でいようね」
と返して携帯を閉じました。
両想いにはなれなかったけど、卒業までに好きな人に好きだと伝えられた事に私は満足し、彼への恋をやめることの寂しさを少し感じながら、彼とは友達でいようと決意しました。
そして、卒業するまでの間も卒業してからも、彼とのメールのやり取りは少しずつですが継続していました。
【8.二度目の再会】
大学生になり、田舎から都会に出てきた私は、20歳になる少し前に成人式の為実家に帰省する事になりました。
振袖を着て、当時の友人達と再会し、お喋りを楽しんでいるとロビーの隅で一人立っている背の高いスーツの男性が目に入りました、彼でした。
メールのやり取りは年に数回、会うのは高校生以来でしたが、私は嬉しくなって彼の元に走って
「久しぶり!」
と声をかけました。
彼は相変わらず優しい笑顔で
「久しぶり」
と言葉を返してくれました。
その後すぐに会場に呼ばれたので、会話は数分しか出来ませんでした。
それでも私はまた彼に会えて、変わらず友人として振る舞えた事がとても嬉しかったのです。
【9.逆転】
成人式の終わった夜、同級生の集まる同窓会には出ず、私は実家の自室で彼にメールを送っていました。
「今日は久しぶりに会えて嬉しかった」
そう送ると、そのまま何通か他愛のない会話が繰り返されました。
するとその内、会話がお互いの恋愛の話に変わりました。
私は彼に
「今気になる子はいるの?」
と聞きました。
彼は
「いるよ。でも、その子は自分を好きだと言ってくれたのに、自分は彼女の告白を断ってしまった。ずっと後悔している」
彼のメールにはそう書いてありました。
自分はその気持ちに気付けなかった
「俺はその子の事が好きだったんだ」
と。
彼は高校時代たくさんの女の子から告白されていたので、私は何人かの名前を上げましたが、どれも違っていたので
「大学生になってからの話?」
と聞くと彼は高校生の頃の話だと言いました。
自信過剰かもしれないけど、もしかしたら...
そう思っては何度も頭を振って消した言葉を彼に問いかけました。
「もしかして私のこと?」
そう聞くと彼は
「そうだよ」
と言ったのです。
【10.運命を信じた瞬間でした】
再会と失恋、そして二度目の再会をして両想いに。
私は両想いになった後に彼に
「いつから好きだったの?」
と聞くと
「多分、話しかけてくれた時からずっと好きだったよ」
と答えてくれました。
失恋しても勇気を出して告白する事の大切さを私はこの恋で学びました。
もしもその後両想いになれなくても、
「貴方の事が好きです」
と伝える事は、相手にとってお互いの関係を見直し自分の気持ちを確認するきっかけになるのだと思いました。
それは恋愛だけではなく、友達や家族でも同じ事が言えると思います。
直接言うのが照れくさいなら、メールや手紙の文章など相手に気持ちが伝わるもので、一言相手への好意を伝えてみるのはどうでしょうか。
もしかしたら気付かなかった大事なものを見つけるきっかけになるかもしれませんね。
ご購読ありがとうございました。
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