同級生男子に興味がない女子高生が音楽教師に片思いをし切ない最後へ

 

 

片思いの始まり

 

高校時代、私は一度も同級生と恋愛をすることはなかった。
それは初老の音楽教師、小森先生にずっと片思いをしていたから。

 

私の地元はTVCMでも良く使われるような美しい景観が自慢で、高校生同士のカップルが美しく映える街に間違いなかった。
繁華街の裏通りには趣のあるライブハウスが軒を連ね、数々のアーティストが輩出されたし、バンドに夢中になるような女子達もまた、独自の文化を生み出してきた。

 

通っていた高校は海岸から少し離れていたが、潮風がどこからともなく感じられる。
みんなはきっと、この港町で映画やドラマみたいな青春を送っていたのだろうと思う。

 

 

同級生には、普通科の高校とは思えないほど、個性的な生徒が多かった。
デザイナーを目指す者、工芸作家を目指す者、肩からいつもレスポール(エレキギター)を下げている者。

 

みんな、何かを目指しているように見えた。
自分には何もない、こんなに何もなくて、この先を生きていけるのだろうか。

 

入学早々、授業についていくことも辛くなり、進学した意味がわからなくなっていた。
そんな虚ろな日々を過ごす中、音楽の授業だけが私を救ってくれた。

 

中学までは、音階はドレミで歌う。
高校に入り、音楽の授業で初めて、ドイツ語の響きに出会った。

 

ドイツ語での音階は

 

「C・D・E(ツェー・デー・エー)・・・」

 

と続くのだが、このC(ツェー)の発音が、私は絶望的に下手くそだった。
音楽教師の小森先生は、うっとりするような美しい声でC(ツェー)を発音し、ドイツ歌曲のみならず、イタリア歌曲まで何でも歌いこなす。

 

グランドピアノも豪快かつ繊細に弾き、女子高生の私の心を酔わせた。
ロマンスグレーのヘアスタイルに黒のタートルネックが年相応の魅力を醸しており、自分がもう少し大人の女性であれば、一緒に腕を組み坂道をデートしたいと思うほどだった。

 

素敵な男性というのは、年代を選ばない。
一番哀しかったのは、自分が人として釣り合わないため、この片思いはどう考えても叶わないと思わされたことだ。

 

小森先生は実績も認められているため、その発言力は誰もが知るところだ。
数名の教師だけが個別の教官室を与えられており、小森先生もその一人である。

 

コーラス部の顧問を務めていたので、コンクールでの歴代の賞状やトロフィーなどが所狭しと飾られていた。

 

 

 

人に好かれる会話術【男女兼用】

 

 

級友に、新入生勧誘の見学会があるから、一緒に参加して欲しいと誘われた。

 

ピアノや歌を聴くのは好きだ。
間近で迫力ある演奏が聴けると思ったし、小森先生がどんな指導をしているのかも気になる。

 

誘いに応じたはいいが、ジュースやお菓子などに気を取られているうち、うっかりと一緒に歌う羽目になってしまった。
たどたどしく譜面を追い、冷や汗をかきながら、レクイエムの出だしを歌う。

 

恥ずかしくて、タクトを振る先生を正視することはできなかった。
誘ってくれた友人は、入部を決めたと言う。

 

私には付いていけそうもないと断りつつ、小森先生と一緒に過ごす仲間たちを羨ましく思った。

 

私の高校生活

 

音楽の授業が終わった後、小森先生が近付いてきた。
一緒に歌わないかと誘ってくれたのだ。

 

並より下くらいの音感しかないし、滑舌が悪いことを理由に何とか断ろうとしていたが、許してくれそうもない。
私には歌うことが向いていると、しきりに勧めてくれる。

 

高校入学後は勉強にも身が入らず、これと言って頑張っていることもない私を、気に掛けていてくれたのかも知れない。
放課後、そっと部室を訪れてみた。

 

尻込みしていたら、くだんの友人が袖を引っ張り中へ通してくれた。
小森先生が早速、音域のチェックを始める。

 

 

高音が苦手だと思っていたが、声質はソプラノだということだった。
部内には音大を目指すような生徒も多く、ピアノや発声の個人指導を受けているらしい。

 

困ったことになったと思いながらも、めげずに練習だけは参加を続け、コンクールの出場メンバーにも入れてもらえることになった。
コンクール前になると、準備の都合もあり、幹部の部員達は先生の教官室で一緒に昼食を取る習わしがある。

 

私などお呼びではないのだが、先生や先輩達にお茶を入れたりして、何とか同じ場にいることを自然に思わせようと画策した。
コンクールは緊張したが、全国大会出場を果たし、嬉しかったし、会場に響き渡る声に感動した。

 

先生はきっと、この思いを私に味わわせてやりたいと思ったのに違いない。
私はその後も昼休みに教官室へ通い続け、2年になる頃には、勉強や将来のことなど何でも相談できる間柄になった。

 

教室に戻りたくないのだが、先生は必ずチャイムが鳴る5分前には戻るよう促してくる。
私が他の教師に目を付けられないよう、配慮してのことだったのかも知れない。

 

片思いでも恋には違いなく、放課後になるまで待つことはできなかった。
時間を惜しんで会いに行くと、困った顔をしながらアメ玉をくれて、古いレコードをかけてくれる。

 

大人になりなさい、と話してくれたことがあった。
子供扱いされたことに少しむくれたが、そこには深い意味があったようだ。

 

先生は病に侵されており、余命が長くないことが皆に知らされた。
3年に上がってすぐの入院。

 

定年まであと1年、一緒に卒業のはずだった。

 

 

 

 

 

 

お別れと感謝の思い

 

先生がいなくても、コンクールには出場する。
部長が決めたことに従い、準備を進めた。

 

タクトはOBが引き受けてくれることになり、毎日の練習報告のため、先生のいる病院へ通う日々が始まった。
私達の言葉を聞き、少し厳しいが的確なアドバイスをしてくれた。

 

全国大会への出場は逃したが、そのときの頑張りは今も皆忘れていない。
3年生はいよいよ、自身の進路に向かい合うことになる。

 

私は主がいなくなった教官室で、先生が今まで残してくれた言葉を思い返していた。
将来のことをしっかり考えるように、軽い男にひっかからないように、ずっと私の事を本気で心配してくれていた。

 

結果的に何一つ守れなかった気もするのだが、誇れることもある。
進学先は世間的な評価ではなく、自分の目的に合致する方を選択した。

 

卒業式を終え、実家を離れるための荷造りをしていたとき、小森先生の訃報が届いた。
止まらない涙を拭いながら、支度を続ける。

 

永遠に片思いのまま、私を残して、先生は去ってしまった。
後日、卒業生数名で先生のお宅を訪ね、仏様に手を合わせた。

 

先生の奥様は美人で、庭先は手入れのされたバラで埋め尽くされている。
別宅にいるお孫さんを、大層可愛がっていたと話してくださった。

 

卒業から10年ほど経っただろうか。
外出先で、見覚えのある服装の生徒達と出会った。

 

白いシャツに、黒いタイとシルバーのブローチ。
懐かしい、コンクールのときの正装である。

 

思い切って声をかけてみると、後輩達に間違いなかった。
県内の音楽祭に、地元から代表で招待されたのだという。

 

私がOGであることに歓声をあげて喜んでくれるところは、やはり可愛い。
宿泊先を聞き、少しばかりの差し入れを届けることにした。

 

変わらず頑張ってくれていたことが嬉しかった上に、もう一つ驚くべき事実があった。
現在は小森先生のお孫さんが部長を務められているのだという。

 

時計は一気に巻き戻され、片思いをしていた自分が蘇ってきた。
幸せなめぐりあいに、感謝した。

 

大人になれなかった自分は、社会に出てから随分と洗礼を受けてきたような気がする。
こうやって小さな幸せに出会えた時は、頑張ったご褒美なのではないかと思うようにしている。

 

ずっと片思いだと思っていたけれど、そろそろ両思いになれるのかも知れない。

 

ご購読いただき、ありがとうございました。

 

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